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NATURE&CLOTH 2019.10.01
アマガエルモドキは、透明な体で生き残る。
夏は薄着の季節ですが、人間界では、体が透けるのは恥ずかしい、というのがまぁ一般的な心理。しかし、自然界にはスケスケの生き物が多くいて、なかでも、熱帯雨林にくらす小さなカエル、アマガエルモドキの透け感は半端ない。
猛毒をもつ種など一部をのぞき、カエルは敵から身を守る武器を持たないため、自然界では捕食の対象となりがち。そのため、カエルにとっては、どうやって身を隠すかが肝心です。
生き物には、葉や砂など生息場所に体色を似せて敵の目をごまかす「保護色」が知られますが、アマガエルモドキの場合は、体を消すという戦術です。体が透き通っていて、特に腹側は内臓が丸見え、心臓の鼓動さえわかるほど。
アマガエルモドキ科の一種(Hyalinobatrachium fleischmanni)
透明な体なら、どんな色や模様の植物にも溶け込むことができます。しかも、熱帯雨林の強烈な陽射しの下でも濃い影ができず、効果は抜群。日中は葉の陰でじっと動かずに休み、敵の少ない夜になると出てきて、昆虫などを捕えて食べます。
アマガエルモドキ科の一種
さて、アマガエルモドキの体は、産卵期にもうひとつ重要な力を発揮します。雨季になると川に突き出た木の葉の上に卵塊を産みつけますが、その卵に擬態していると考えられているのです。
アマガエルモドキ科の一種(Hyalinobatrachium fleischmanni)
メスは産卵後どこかへ去りますが、オスは片時もそばを離れずに卵を守ります。半透明な皮膚に薄い斑点模様のある親の背中は卵塊によく似ていて、卵をねらうハチなどの敵からおとりのように目をそらす効果があります。そして、この時ばかりは渾身の力をこめて後ろ足で敵を振り払い、撃退します。卵がかえるまで、オスの体を張った戦いは続きます。
こうして無事にかえった、やはり体の透けたオタマジャクシたちは、葉の上から下の川にすべり落ちていき、水中で成長します。
自然界には透明な生き物がほかにもたくさん暮らしています。人間界では、薄いけれど透けない、何なら紫外線からも守ってくれる便利な素材の生地があったら言うことなしです。
参考文献:『生き物たちのふしぎな世界』学研